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sweet sweet3.5

sweet sweet 3.5


「私の元へ来ないか。」

将軍はそう言った。高級な店で食事をしながら。
「君はとても優秀な錬金術師だと聞いている。どうだ。私の元でならば何不自由なく研究もさせてやろう。給与も待遇も、そうだな・・・今は家も無く旅をしているそうだが、家を持ったらどうだ。研究資料を集めてそこを拠点にするというのは。」
もしゃもしゃと口に物を詰め込みながら、その将軍は言う。
ニタニタと笑っている姿がなんとも・・・生理的に受け付けないと言うか。不気味な印象を受ける。
「いえ、俺は今でも満足しているので。それに、後見人をマスタング大佐から変える気はありませんし。」
「・・・随分、慕っているんだな。マスタング大佐を。」
相変わらずニタニタと笑いながら、舐めるように見てくる細い目。

大佐だったら・・・。
大佐だったら、きっと食事も絵になるようにスマートだ。俺と二人ならデザートも頼むだろうか。勿論、俺が代わりに頼んでやるに違いない。そうしてとろけるような笑みを浮かべて「美味しいな」って幸せそうに言うんだ。

「・・・で、どうかね?」
大佐だったらという妄想は、すぐに目の前の狸のような将軍にさえぎられてしまって。少し苛立ちが募る。何度断っても、しつこく自分の元へと誘ってくるコイツは何を目的としているんだろう。
「ですから、何度言われましても俺はマスタング大佐を後見人から外すつもりはありません。」
俺はそういって席を立つ。もう、付き合うだけ時間の無駄だろうし、こんな相手とでは上手い食事も進まない。
将軍は短くそうか・・・と呟いて、ニタリと笑った。
「そうだ。マスタング大佐は近々昇格するらしいな、おめでとう。」
俺は足を止める。そんな話は、聞いていない。
「しかしだなあ・・・部下の粗相で、その昇格が無くなってしまわないように・・・十分気をつけなさいと、彼に伝えてくれたまえ。」
ニタリ、と笑ってそいつは言った。
汚い男だと、思う。同時に、こんな駆け引きの中で生きてるアイツは凄いと感じた。
俺は、ガキだから。

「・・・俺はどうしたら良いんだよ。」

その将軍は相変わらずニタリと笑った。
俺はどうして、こんなに大佐が。


2014.02.06
番外編。エド視点です。