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sweet sweet 5


街中で鋼のを見た。勿論、あの気色の悪い少将も一緒にだ。
何やら談笑しているようで、ハドウィル少将は笑いながら鋼のの肩に手を添えていた。
汚らしいその手で、あの金色に触れることが許せない。
隣にいた中尉が私の視線の先に気づき「あら」と短く声を上げた。
「ハドウィル少将とエドワード君ですね。」
「あの狸おやじめ。燃やしてしまいたい。」
私がそう呟くと、中尉はただただ苦笑した。
「大丈夫でしょうか、エドワード君。」
中尉はいつも通りの口調でそう言ったが、内心は心配で仕方が無いはずだ。
「鋼のが自分でそうしたいと言ったんだ。勝手にしたら良い。」
私が言うと、中尉は一度私に視線を向け、そして鋼のに視線を戻した。
中尉はわかっているだろう。私の言葉がまるで本心ではないと言うことを。
困ったような表情を浮かべる中尉を見て、なんだか私まで心配する気持ちが増すようで、その場を急いで後にした。

こんな時にのんきな話だと思うかもしれないが、鋼のからの差し入れが無くなって私は甘いもの不足だ。
堂々と買うわけにもいかない。以前はある程度の期間耐えることが出来たが、定期的に差し入れされる高級チョコレートや有名店の人気菓子にすっかり習慣付けられてしまっていた。
「大佐、コーヒーお持ちしますか。」
中尉が私がイライラしているのを感じてかそう言う。
少し休んではどうか、ということなのだろう。
「ありがとう。いや、自分でいれてくるよ。」
重い腰をあげ、中尉を残して執務室を後にする。
マグカップにコーヒーを淹れ、砂糖をどばどばと、普通の人が見たら引いてしまう程度に入れた。
砂糖のざらざらとした舌触りが、あまり美味しいとは言えないが、甘いものを摂取するとしたらこれしかないだろう。
鋼のが居ないと甘いものもまともに食べられない。
そろそろ甘党だと暴露しようか、とも考えたが恥ずかしい。肥満にならないか心配されるだけだ。
「まったく…。」
甘いものを食べられないストレスを、全部彼のせいにして、私は呟いた。

家に帰ると玄関先に、ピンクのとても可愛らしい袋がかかっていた。
私は女性からの贈り物かと手に取り、家に入る。
それがどうか甘いものでと願いながら、同時にそんなことは有り得ないだろうと溜息を洩らす。
大体送られてくるのは手紙と腕時計やなんかといった小物類。甘いものが送られてくるのなどバレンタインくらいのもので、大抵の女性は私が甘いものを好むとは思っていないのだろう。
私が袋を覗くと、包装された箱と手紙。
手紙を見ると封はされておらず、ん?と首を傾げてしまった。
開くとそこには見知った雑な字。

「俺がいない間甘いもん食えなくて困ると思うから置いてく」

それだけの文章が広い便箋に堂々と書かれていた。
私は腹立たしいような嬉しいような、なんとも形容しがたい感情におそわれ苦笑した。
箱を開けるとクッキーとキャンディーが詰まっている。色とりどりで綺麗だ。
また、中にはチョコレートでコーティングされているものなども入っていて、私の甘いものを求める衝動は当分抑えられそうだった。
私はその中の一つのキャンディーを口に入れ、コロコロと転がしながらその甘さを感じた。
まったく困った奴だ、そう思う。
歯にあたったキャンディーがカラリと音を立てて、なんとも幸せな気分だった。

その金色のようなレモンキャンディーは甘酸っぱく私の舌を刺激する。


2014.05.26

甘いものに飢える大佐。そんなことは承知のエドワド氏。