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sweet sweet 7

「敵を欺くにはまず味方から、とはよく言うが。」

私は静かに口を開く。車の中で、助手席の中尉は少し振り向いて私に視線を寄越した。
ハボックにはまだ伝えていないのでぽかんとした様子だ。運転しながらバックミラー越しに私の表情をうかがって、口を開く。
「なんのことッスか。」
「エドワード君のことよ。」
中尉は前に視線を戻しながら、軽くため息をついてみせる。
よほど心配だったのだろう。私も同じ気持ちではあるが、早々にネタばらしがあったためか、中尉に比べると落ち着いている。
しかし、私にも秘密にあの脂ぎった男のもとへと赴いたことを、私が知らないというのは悔しかったために、中尉には私は事前に知っていたことにしている。
「まんまとだまされただろう。」
私が笑ってみせると、中尉は軽くにらんで見せた。
「大佐があんなにも慌てていらっしゃるものですから、すっかりエドワード君は大佐のもとを離れたのだと思っていました。」
「あれももう子どもじゃないということかな。」
とぼけてみせると再びため息を吐く中尉。
「ということは、大将は裏切ったわけじゃないってことッスか。」
ハボックがやはり呑み込めずに聞いてくる。
「ああ…」
目の前には大きな研究所らしき建物が見えてくる。
その横には豪邸とも言えるとても大きな家が。庭は広いが手入れが甘く、少々不恰好に見える。全体的に華美な印象で、あまり美しいとは感じられない建物だ。
「さあ、仕事だ。我らが鋼の錬金術師が待っている。」
私が笑うと、中尉もふ、とほほ笑んだ。

「ここで行われている研究が違法のものと通報を受けた。中を調べさせてもらう。」
私が声を張ると、ヘドウィル少将の部下であると思われる男はびくり、と体を震わせる。その研究所にはなかなかの人が忙しなく動いており、面倒だなと少し億劫な気持ちだ。
「ヘドウィル少将は今不在ですので、あらためて…」
「ん?ヘドウィル少将がいらっしゃらなくても結構だ。それとも、何か不在だと不都合なことでもあるのかね?」
私が笑うとその男は消え入りそうな声で「ありません」と答えた。

そうだ、私はわざとらしく、いかにも今思いつきましたという調子でいう。
「ここには鋼の錬金術師がいるだろう。彼を出したまえ。」

私が楽しそうに言うと中尉はあきれたというようにため息を吐いた。


2015.0725

お菓子が全く出てこなーい。